徒然なるままに シンガポール総選挙

5月5日の朝刊にシンガポール総選挙の記事がありました。1991年から約4年間暮らした国ですから、矢張り気になります。今回は20年にわたって首相を務めた、リー・シェンロン氏から指導者の座を引き継いだ、ローレンス・ウォン首相にとっては初めての総選挙との事です。この国では人民行動党(PAP)という与党が圧倒的に強いのですが、今回も97議席中、87議席を獲得して圧勝しました。これはシンガポール時代の総選挙にまつわる苦い思い出話です。

1991年7月に特派員として着任したのですが、直後の8月末、建国の父、リー・クアンユー氏からバトンを受けたゴー・チョクトン氏が首相に就任して初の総選挙がありました。話題はあります、私も初仕事です。張り切って取材にかかりました。先ずは野党候補の立ち合い演説会を団地の庭で取材しました。トラックがやってきて荷台の上に椅子を並べ“演台”の出来上がり、少数野党なので予算にも限りがあるのです。中国語、マレー語、インド(ヒンドゥー)語、そして英語と4人の候補が次々と演説します。他民族国家ですから候補者も聴衆も多言語です。

翌日、与党、人民行動党を激戦区で取材しました。流石お金持ち、芝生広場の会場では、立派な演壇が作られ、テレビの中継も入っています。折よくゴー・チョクトン首相が到着、ばっちり映像も撮る事が出来ました。正にグッドタイミング、リポートも撮って意気揚々とSBC(シンガポール国営放送)に向かいました。衛星を使って東京フジテレビに送るのです。

ところがSBCに到着するとスタッフが数人、玄関前で騒いでいます。「何事やあらん」、と思ったら我々の到着が遅いと待っていたというのです。何んと、私が衛星伝送の時間を勘違いして、予約の時間が既に終了していたのです。日本とシンガポールの間には1時間の時差、日本の方が1時間進んでいるのをすっかり忘れていたのです。顔から火が出る思いで、SBCのスタッフに平謝り、フジテレビ外信部に平謝り。特派員生活、ほろ苦いスタートとなりました。 以後、東南アジア、南アジアで様々な国に行きました。衛星送り、生中継も数々経験しました。この時の失敗が“教訓”になったのは言うまでもありません。

出野 徹之(KTV)

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